2014/06/17

シリーズASEAN事情(17)シンガポールでは、なぜチューインガムが禁止か?

■狭い国土とキアス気質

シンガポールは、実はとても不思議な国です。小さな国土に500万人が暮らすために、さまざまなルールや規制が設けられています。例えば、人口の80%以上はHDB(Housing and Development Board)と呼ばれる公共住宅に住んでいます。国土の狭いシンガポールでは、一軒家は大変高価なものです。そのため、国民の大多数が郊外の団地に暮らしています。

また、シンガポールの車購入費用は世界一高いかもしれません。入札による車両購入権、各種税金を加えると、車両価格の4~5倍が必要です。まあ、国土の端から端まで走行しても1時間とかからない国では、車はぜいたく品なのでしょう。

よく知られた話ですが、シンガポールではチューインガムが禁止されています。食べることはもちろん、国外から持ち込むこともできません。これは20年以上前のことですが、開通したばかりのMRT(地下鉄)車内の椅子にガムを付けるいたずらが多発し、怒ったリー・クワンユー首相(当時)がガム禁止の法律を作ってしまったためです。この法律の一番大きな犠牲者は、シンガポールから撤退せざるを得なかったリグレー(Wrigley:アメリカのガムメーカー)でしょう。

また、生活面でもさまざまな罰則が存在します。街中でごみを捨てても、トイレで水を流し忘れても、自宅敷地内で蚊を発生させても、全て罰金が科せられます。国土が小さい上に、規則だらけの国に生まれ、暮らしていくのは、外から見るととても大変なことに思われるのですが、シンガポール人は自国に高い誇りを持っています。

そのシンガポール人気質をとてもよくいい表しているのが、「キアス」という言葉です。キアスとは、福建語が基になったシングリッシュ(シンガポール流英語)で、「人より得をしたい」「人に負けたくない」という意味です。小国シンガポールがさまざまな困難を克服し、現在の地位を築く中で培ったのがキアス気質かもしれません。

しかし、今後、シンガポールに求められるのは、地域経済発展へ向けた貢献のはずです。そのためには、脱キアスが必須条件かもしれません。


◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
 知っておきたいアセアン事情」を連載中
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/fpro_aseanpro.html

◇コラム DCS代表 栗田 巧

http://www.dcs-group.jp

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