2014/05/20

シリーズASEAN事情(13)ベトナムに主力工場が置けない3つの理由

■リスクヘッジの拠点として

今回もベトナム事情についてです。ベトナムの日本商工会議所の集計では、ベトナム全体での日系企業数は約1000社(2010年時点のデータ)。加えて、商工会議所に所属していない企業を含めると1500社に上るといわれています。そして、その大半が、この4~5年で進出してきした企業です。

進出地域としては、北部ハノイと南部ホーチミンに大別され、この両地域では進出企業の傾向が大きく異なります。外国企業にとって古くからの進出先であり、どちらかといえば、中規模の事業会社が中心である南部ホーチミンに対し、北部ハノイは大手製造業の進出、また、これに伴う関連部品メーカーの進出が顕著です。

企業数統計だけ見ると、順調な増加を示しているベトナムですが、進出企業にはある特徴があります。それは、いずれも比較的事業規模が小さいことです。

ベトナム工場のポジションとしては、成長性は高いが現状では中規模な国内市場向けの製造拠点、もしくは周辺国にある主力工場を補完する第2工場です。例えば、中国やタイで操業している主力工場のリスクヘッジとして、中規模の製造拠点がベトナムに設置されるのです。

以降では、ベトナムに主力工場が置かれない理由を考察してみます。現在のベトナムが抱える問題点といえるかもしれません。


■ベトナムに主力工場が置けない3つの理由

1)政治体制:開放は進めど、一党独裁のリスクは変わらず
ドイモイ政策により市場開放されたベトナムですが、政治体制は共産党の1党独裁です。国会議員が国民の直接投票で選出されるという点では、欧米や日本に近いのかもしれません。しかし、有事の際、ベトナム政府がどのようなかじ取りをするのかはまた別の問題です。また、官僚組織が強いベトナムでは、官公庁の低いサービスレベル、非効率な業務運営が問題といえましょう。

2)インフラ整備:産業基盤インフラ整備の遅れが今後のネックとなる?
外国投資を呼び込み、さらなる工業化を進めることで経済成長を目指すのであれば、根本的なインフラの整備が必要です。電気水道、通信、道路、港湾といった産業基盤の整備と充実が急務です。しかし、現段階ではこうした取り組みに勢いはありません。このままでは産業インフラがさらなる経済成長の「制約条件」となる可能性が高いのではないかと考えられます。

3)人材育成:さらなる措置が必須
前述の通り、ベトナムでは優秀な人材確保が年々難しくなっています。これからの発展を目指す国にとって、優秀な人材の育成は絶対条件です。また、進出企業にとっては、安定した人材の確保ができなくては、投資のアクセルを踏めません。民間企業レベルではなく、政府主導の包括的な措置が必要なように感じられます。

近年のベトナムは、周辺の発展途上国がたどってきた道を、さらに短い時間で走ってきたといえるでしょう。「先人の知恵」を学びながら進める後発国の優位性もありますが、現時点では、あまりに短い時間での発展がもたらした矛盾・不整合が顕在化しつつあるのではないでしょうか。

これから先は、周辺国が直面しつつある「廉価な労働力を基盤にした工業化の限界」を越える新しいモデルの提示が、ベトナム政府に求められているのではないでしょか。個人的には、「賢いベトナム人」が何を打ち出すのか楽しみなところであります。

◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
 知っておきたいアセアン事情」を連載中
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/fpro_aseanpro.html

◇コラム DCS代表 栗田 巧

http://www.dcs-group.jp

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