2014/05/13

シリーズASEAN事情(12)ベトナムの労働者気質

■GDPの急成長の陰で進むインフレ

今回もベトナム事情です。ベトナムはベトナム戦争後、順調に成長してきたわけではありません。ベトナム戦争に勝ち、国土開放を行った北ベトナム政府(当時)が敷いた社会主義国路線は、相当な混迷をもたらしました。その後、社会主義路線の見直しが行われ、1986年の「ドイモイ(刷新)政策」による市場経済の導入以降、やっと何とか国内経済の成長が始ったのです。

2008年に発生したリーマンショックの影響で、東南アジア諸国が軒並みマイナス成長となる中、ベトナムは安定成長を維持しました(まあ、国内経済規模が小さく、国際金融に組み込まれていなかったことが幸いしたという見方もあるのですが……)。

この数年、5~6%台のGDP(国内総生産)成長率で推移しているベトナムですが、実はインフレも高い水準で推移しています。2011年にはアジアで最悪となる前年比19%のインフレ率を記録しています。

経済成長を優先させた結果、インフレの抑え込みに失敗したのでしょうが、賃金の上昇が、物価上昇に追い付かないことで国内消費の低迷を招き、今後の経済成長そのものに大きな影響を与えるという皮肉な結果になっています。

■東南アジアの他の国々に比較すると中国人に共通する部分があるベトナム人気質

ベトナムではGDPの急成長の陰でインフレが進んでいます。こうした社会変化は、ベトナムに進出した外資系企業にも重大な影響を与えています。安価な労働力、勤勉な国民性、人口&平均年齢の低さが、ベトナム投資の魅力であったのですが、その中でも、安価な労働力は、都市部&近郊では既に過去のものになっています。

特に、人件費が急騰した中国華南地域に見切りを付け、ベトナムに進出した製造業にとっては、この急激な変化はかなり大きな誤算であったと推測されます。ベトナム人の勤勉性は、この地域では非常にまれな気質といえます。ベトナム人はいろいろな意味で「賢い」ということです。
筆者の私見ですが、ベトナム人には中国人と共通する志向があるように思えます。いい意味では、向上心が高く、勤勉で努力家なのですが、それは同時に、強い競争意識、金銭への強い要求といった若干ネガティブな側面につながっています。
短期間に国内経済が急激に成長し、かつ労働人口年齢の低いベトナムでは、周辺諸国以上に雇用問題が深刻化しています。優秀な人材ほど、転職機会(=収入増)が増加しています。

本来、ある程度の期間にわたって就業することで習得できることもあるはずですが、その前に転職を繰り返すケースが多いのです。人材育成の中長期的観点からは、将来、大きな問題となるおそれがあると思います。



◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
 知っておきたいアセアン事情」を連載中
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/fpro_aseanpro.html

◇コラム DCS代表 栗田 巧

http://www.dcs-group.jp

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