2014/04/29

シリーズASEAN事情(10)マレーシアとインドネシアの両国の政治体制、安定しているのはどちら?

■インドネシアの政治体制の安定度は?

では、最後にもう一つ重要なポイントから、両国を比較してみましょう。政治体制の安定です。1970~80年代に東南アジアの大国であったインドネシアは、その後長い低迷期を迎えます。その背景にあったのは、たびたびの政権交代と一貫しない政策です。これは、どこかの国にもかなり当てはまる事象ですが、当時のインドネシアにとってはかなり大きなハンデでした。良くも悪くも、政治リーダーのできが、その国の成長を左右する大きな要因であるのは、発展途上国共通の現象かもしれません。
こうした混乱の時代に終止符を打ったのは、2004年に初めての直接選挙で選ばれた第6代大統領ユドヨノです。その後も、2009年に再選され、2014年までユドヨノ政権が続く予定です。こうした政治の安定が、それまでの反政府勢力を鎮静化し、外国企業からの直接投資の呼び水になりました。そうなると、2.4億人の人口に支えられた国内経済が堅調な成長を始め、更なる外国からの投資を呼び込む成長モデルが、ここ数年のインドネシアで確立されています。

■マレーシアは東南アジアでも政治体制が安定した国であったが・・・
一方のマレーシアですが、1981年に就任した第4代マハティール首相は、「ルックイースト」と呼ばれる日本の勤労論理に学ぼうという政策を掲げ、その後の経済成長をもたらしました。今日の日本の現状からすると、ちょっとピンと来ないのですが、当時は日本に代表されるアジア的な価値観を尊重し、西洋的な価値観を是正しようという目論見があったと言われています。
マレーシアは過去50年近く統一マレー国民組織(UMNO)が政権を担う東南アジア有数の政治体制が安定した国です。ところが、ここに来てUMNOが政権を失う可能性が出てきました。来る5月5日に予定されている総選挙では、野党連合の優勢が伝えられています。
この野党連合を率いるのは、元副首相アンワル・イブラヒムです。アンワル副首相は、1990年代半ば、マハティール首相の後継者と目されていたのですが、1997年に起きたアジア通貨危機の対応で、マハティール首相の政策と相反し、結果、副首相の座を追われ、UMNOからも追放されてしまいます。
その後は、汚職、同性愛(イスラム教で禁止・その後無罪判決)などの罪に問われ、6年近く刑務所に服役していました。釈放後の2008年には議員復帰し、野党指導者としての地位を築いてきました。今回、アンワル元副首相にとっては、積年の恨みを晴らすチャンスが到来しているのでしょうが、長期にわたる政治的な混乱はマレーシアにとって大きな痛手となる可能性が高いといえます。
1990年代は東南アジア有数の生産拠点であったマレーシアも、2001年の中国WTO加盟以来、海外からの製造セクターへの直接投資が減少しています。その中国への生産拠点一極集中が、「チャイナプラスワン戦略」として是正されている機運は、マレーシアにとっては大きなチャンスであるはずですが……。
複数の国・地域にサプライチェーンを既に構築している一部の大企業は別として、大半の日系企業にとって、進出先のカントリーリスクヘッジは、大きな課題ではないでしょうか。残念ながら、発展途上国が多くを占める「東南アジア」では、さまざまなリスク要因が内包されています。企業レベルで対応できるものも、できないものもあるのですが、後者の筆頭が政治体制といえます。今回取り上げたインドネシア、マレーシア以外の国でも、同様のリスク要因が存在します。最近では、タイ国王の健康問題、ミャンマーの民族紛争などです。

■マレーシアについて
国名は「マレーシア」(Malaysia)、人口2,855万人(2011年)、面積は329,735平方キロメートルで日本のおよそ0.87倍。首都はクアラルンプール で人口は165万5,000人(2010年)、言語はマレー語、英語、中国語、タミール語で公用語はマレー語。宗教はイスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教など。マレーシアは連邦立憲君主制国家で、イギリス連邦加盟国です。
2012年の実質GDP成長率は5.6%、名目GDP総額3,035億2,600万ドル、一人あたりのGDP(名目)10,304ドル、物価上昇率1.6%、失業率3.0%、いずれも2012年の数字です。
ウィキベディアから引用すると、マレーシアは旧宗主国のイギリスや、日本、オーストラリアなどと貿易を通じて密接な関係を持つ他、隣国であるタイ王国やシンガポール、インドネシアなどのASEAN諸国とも密接な関係を持っています。からに近年では中国・韓国との関係も強化していて、同時にイスラム教国であることから中東諸国との結びつきが強いのもマレーシアの特徴です。現在もイギリス連邦の一員でもあります。

このシリーズASEAN事情は毎週火曜日の掲載です。引き続きご覧ください。


◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
 知っておきたいアセアン事情」を連載中
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/fpro_aseanpro.html

◇コラム DCS代表 栗田 巧

http://www.dcs-group.jp

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