2014/03/25

シリーズASEAN事情(5)ラオスは「タイプラスワン戦略」に適合するか

前回に引き続きラオスについて取りあげます。ラオスが「タイプラスワン戦略」に適合するのかどうか、「長所」と「短所」とを考察してみたいと思います。
一般的な海外生産拠点としては、ラオスは難しい問題を多くはらんでいます。しかし、タイプラスワンという観点で考えると、ラオスは有力な拠点になり得るということが今回のポイントです。

◇長所
これはまずは労働賃金です。最低賃金が改定されたとはいえ、一般的なワーカーの給与水準は、まだまだ魅力的です。絶対とはいえませんが、今後、ラオスが急速な経済成長を遂げることは考えにくく、よって、給与水準の急激な上昇もないと判断されます。

意外と知られていないことですが、ラオスのラーオ語はタイ語に近く、9割ほどの言葉が共通です。ラオス国内のTV放送は、タイのTV番組が多いため、一般的なラオス人はほぼ完璧にタイ語を理解するといわれています。言葉の壁が低ければ、タイからの技術移転は比較的容易に進む可能性が高いでしょう。例えば、タイ工場で作成した業務マニュアルを、そのままラオス工場でも使用できます。

◇短所
アジア地域の発展途上国が、国内経済発展を推し進める最も一般的な手段は、外国投資による工業化です。そして、工業化を進める上で重要な条件に、大型船の着岸できる港湾の整備があります。しかしラオスはそもそも海に面していないのですから、これは無理な話です。

港湾施設以外にも、電気、水道といった基礎的な産業インフラの整備が遅れています。また、外国企業がラオス国内で事業活動を行うための各種法律(会社法、税法、会計基準、その他)がしっかり整備されておりません。よって初期投資額の大きい案件はリスクが高く、現実的ではないでしょう。

ラオスの人口は約664万人と少なく、国内経済の規模が限られています。地産地消の製造業モデルは当てはまりません。また、少ない人口は労働人口が限られることにもつながります。

ラオス政府が、積極的に外国からの投資、特に製造業の進出を求めているのか分からない部分があります。通常、外国企業からの直接投資を呼び込むため、政府主導で、現地法人設立の簡素化、外国人への労働許可緩和、所得税の減税・免除などの特恵措置を用意するのが一般的ですが、現時点では、ラオスより周辺各国政府の打ち出す優遇策の方が優っています。

■短所を補って余りある「ラーオ語」の価値

正直なところ、一般的な海外生産拠点としてのラオスには高いポテンシャルがないかもしれません。しかし、「タイプラスワン戦略」となると少し状況は異なってきます。タイに生産拠点を持つ企業が、競争力強化のため労働集約工程を分散させる戦略を取るのであれば、ラオスは大きな選択肢となりえます。

本来、かなりマイナーな言語であるタイ語が通じると言うのは大きなアドバンテージと言えましょう。また、労働集約型の生産工程であれば、中心的な生産資源は人であり、ラオスの「背丈」にあった生産体制が敷けることも重要な要素です。

このシリーズASEAN事情は毎週「火曜日」の掲載です。引き続きご覧ください。


◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
 知っておきたいアセアン事情」を連載中
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/fpro_aseanpro.html

◇コラム DCS代表 栗田 巧

http://www.dcs-group.jp

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