2014/03/04

シリーズASEAN事情(2)タイに進出している日系企業に見る「タイプラスワン戦略」の具体例

今回は「タイプラスワン」の背景をタイ国内から見てみましょう。タイにある既存の主力工場を「マザー工場」とし、労働力の安いメナム地域に「チャイルド工場」を設立する分散生産体制を構築する動きのことです。こうした動きは、一部の大手日系製造業では既に実行に移されています。
例えば、電子機器部品製造のミネベアは、2011年末にカンボジアの首都プノンペン郊外に新工場を設置しました。現在、整備が進んでいる南部経済回廊を使えば、バンコクとプノンペンは15時間ほどの陸送距離です。既存の物流基盤を生かしつつ、リスクの分散と人件費の削減が実現できます。
また、タイにデジタルカメラの主力工場を持つニコンは、2013年後半にラオス南部のサバナチケット県に新工場を開設します。対象品目は、現在、タイ工場で生産しているデジタル一眼レフカメラの一部工程だといわれています。

■タイ依存へのリスクヘッジ

この両社のタイ主力工場は、2011年に発生した大洪水の被害地であるバンコク北部にあります。大洪水発生時、ミネベア(タイ)の主力であるバンパイン工場(1万5000人の従業員を抱える巨大工場)は、周囲に土のうを積み、工場設備への実害は防ぎました。しかし生産停止を余儀なくされ、ビジネスへの影響は大きいものがありました。
ニコン(タイ)のロジャナ工場は1カ月以上冠水し、生産設備に甚大な被害が発生しました。また、サプライチェーンの分断により、一眼レフカメラ市場におけるシェア下落という大きな事業ダメージも起きました。タイ1国に依存するカントリーリスクのヘッジとしても、日系製造業にとって、メナム地域は有望な進出先と捉えることができます。
現時点では、メナム地域への進出は、アパレル業界を除けば、大手企業が中心です。しかし、まだまだ大型の投資案件は少ないようです。そのため、裾野産業の主要構成メンバーである中堅企業の同地域への進出は限定的な状況です。

■中韓の攻勢に日本は巻き返せるか

一部メディアでは「日系製造業のラストリゾート」と称されるメナム地域ですが、実は本格的な投資を先行させている国があります。中国と韓国です。中国は、道路、鉄道、電力といったインフラ投資を中心に、この地域での存在感を高めています。韓国勢は、スマートフォン製品の販売が好調なサムスン電子、白物を中心とした家電で地域シェアを伸ばしているLGエレクトロニクスなどが、この地域に大型工場を建設し、大量雇用を通じた地域経済への貢献を高めています。

今後、メナム地域の国を対象とした日本政府主導によるインフラ輸出、日系製造業を中心とした広域生産体制の整備が加速されていくと思われます(希望的観測を含め)。また、親日派の国家や国民が多いのもこの地域の特色といえます。これからのALL JAPANの巻き返しに大いに期待したいところです。

■タイについて知っておきたいポイント

正式な国名は「タイ王国」( Kingdom of Thailand)、立憲君主国家、人口は6,408万人(2011年)、面積は日本のおよそ1.4倍にあたる513,115平方キロメートル、首都はバンコクで人口572万人(2007年)、言語はタイ語、宗教は人口の約95%が上座部仏教、その他イスラム教が4%、キリスト教が0.6%などとなっています。

ウィキベディアから引用すると、タイは第二次世界大戦後の東西冷戦期は、ベトナムやカンボジア、ラオスのような近隣諸国の共産主義化に脅かされたものの、「共産主義の防波堤」としてアメリカの大々的な支援を受けたことも影響し、共産主義化は免れた。また、国民の高い教育水準や豊かな国土を背景に徐々に工業国への道を模索し、1967年には東南アジア諸国連合(ASEAN)に結成時から加盟。1989年にアジア太平洋経済協力(APEC)に結成時から参加した。

1997年に始まったアジア通貨危機により経済は一時的に停滞したものの、その後急激な回復を見せ、中国系企業の進出も増え、現在では再び高い経済成長率を維持しており[、東南アジアにおける代表的な工業国としての立場を保ち続けてきました。しかし、2006年頃からのタクシン派と反タクシン派との政治的内紛が、2014年現在も続いている。次回はタイもついて引き続きレポートします。

◇コラム DCS代表 栗田 巧
http://www.dcs-group.jp

◇もの作りのスペシャリストのための情報ポータル「MONOISTist」にて
知っておきたいアセアン事情」を連載中

http://monoist.atmarkit.co.jp

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