2013/12/05

■コラム■安替(Michael Anti): 中国の巨大なファイアウォールの陰で

時折、紹介しているTED Talksビデオの中から今回は中国人ジャーナリスト、安替(Michael Anti)が昨年行ったプレゼンテーション、"Michael Anti: Behind the Great Firewall of China"を取り上げ、筆者の感想も含め、簡単な記事を書いておきたい。

 中国ではここ3-4年、若い世代を中心として、ソーシャルメディアの活用が進み、中国人の意識のあり方や考え方などに変化がみられるようだ。

 前掲ビデオをみていると、中国政府(安替の言葉によれば猫)が中国人ネットユーザ(安替の言葉によればネズミ)を世界のインターネット社会(とりわけ2.0ウェブサービスの世界)から遮断しても、中国ではいわばチャイナネットとも言うべき世界が模倣の上に組み立てられてきた経緯があるということことが分かる。中国政府はインターネットの検閲ということもあるが、一方で中国版のサービスにより、人びとのソーシャルネットワークへの願望を満たそうとする。ここのあたりが実に興味深い。

 そして、中国人ネットユーザは、Googleの中国語版である百度(Baidu)、Twitterの中国語版である微博(Weibo)、Facebookの中国語版である人人網(Renren)などを巧みに使うことでソーシャルネットワークの世界に入っていく。特に、ソーシャルメディア領域のサービスを使い、つぶやいたり、ブログを書いたりしている。このようにして、人びとの情報発信と情報交換の領域が拡大している。

 中国には5億人のインターネットユーザがおり、3億人がマイクロブロガーとしての活動をしている、と安替は言う。中国政府にとっては3億人の人たちが情報発信と情報交換をする世界に向き合うことは大変なことだ。

 中国のインターネット社会には検閲があるのに何故こうしたインターネットを用いたソーシャルメディア領域に迫力ある盛り上がりがみられるのか?

 理由の一つは中国語だ、と安替は言う。Twitterやその模倣サービスには140文字という文字数制限がある。英語では一つのつぶやきはせいぜい20語程度で終わってしまうが、中国語では140文字がフルに使えるので、中国の微博(Weibo)などでは文章を書くことができる。

 また、中国のインターネット社会では、ストレートな表現や微妙な表現をすることは確かに難しいが、中国人は語呂合わせや当て字などを巧みに使い表現しているようである。

 中国ではサーバーは北京にあるということが地方社会の状況に大きな変化をもたらしている、と安替は言う。従って、地方の政府の役人(地方の猫)が検閲をしようとしても自ずから限界がある。人びとは、例えば微博陳情を行ったり、日常の不満を語ってきた。安替は、ここ3年くらいの間に、地方政府のありようはかなり変化し始めたと言う。

 こうした環境下で、インターネットは中国社会における世論の形成を後押しするという大きな役割を果たしている。今では多くの中国人が言論の自由を求め、人権や社会的正義などの追求を当たり前の権利と考え始めている。

 中国政府(猫)が世界のソーシャルメディアの領域から中国人ネットユーザ(ネズミ)を遮断しようとしても、人びとはチャイナネット社会に誕生した模倣版サービスなどを巧みに活用することでネズミの夢の実現に向かっていつでもどこでもつぶやき、ブログ記事を書く。

 われわれ日本に住み、生活する者も、日本の政治家や政府のような悪い猫に十分気をつけ、この国でわれわれの夢を実現すべくつぶやき、発言し、そして行動し続けたいと思う。

(131205/浦上アジア経営研修所)

http://asiaitbiz.blog20.fc2.com/blog-entry-1045.html

コメントを投稿